プリプレスとは、デザイナーが作成した「デザインデータ」を「印刷用データ」に変換し、刷版(印刷用の版)を作成するまでの一連の工程の総称となります。それ故に、印刷(Press)工程の前工程であることからプリプレス(Pre-Press)と呼ばれています。
このプリプレスは、最終印刷物の品質を左右する上で非常に重要な工程となります。組版(制作)においては、紙面全体のレイアウトからフォントサイズ、行間、行送りなどが不完全であると、読みにくい紙面に出来上がってしまいます。また、たとえデザイナーが良いデザインをしても、写真の品質が悪ければ、そのデザインは台無しになります。そして、社内の全工程においてカラーマネジメントがしっかり管理されていなければ、お客さまの狙った色は紙面上に再現されません。
原稿に指定されたとおりに、テキストや画像を紙面上にレイアウトする作業です。一見簡単な作業に思えますが、文章を読みやすくするには、紙面全体のレイアウトから書体、文字サイズ、行送り、行間など、細部にまで気を配りながら仕上げていかなければなりません。また、デザインデータを支給された場合においても、そのデータのままでは、印刷用の「刷版」を出力することはできません。印刷用のデータに変換する必要がありますが、データ変換に必要なチェック項目がいくつもあり、そのまま変換すると不具合が発生する場合は適切に修正し、印刷に必要な情報を追加入力し、多くの作業を経て「印刷用データ」へと変換していきます。
人が目で見たそのままを、印刷において精度や色を忠実に再現することは大変困難なことになります。例えば、人の目で見た対象物は、カメラで撮影され、データ化されます。そして、RGBの画像データはCMYKに変換され、それが小さな点(網点)のデータに変換され、印刷用のアルミの板(刷版)に焼き付けられます。さらにその網点は、4色のインキでゴムローラーに転写され、最後に紙へ再転写されます。このように多くの過程を経るため、当然写真の再現性は、人の目で見た通りにはなりません。品質の再現性は落ちてしまいます。しかも、印刷用紙の種類によって、その発色具合は目に見えて大きく異なります。
しかしながら、ファビオのプリプレスは、お客さまから指示がなくとも、印刷される用紙の種類による発色具合を想定し、目標の色調に整え、またデザイナーの狙いに合わせた微妙な色修正をおこないます。料理はよりシズル感を出し、貴金属製品はよりシャープに高級感を漂わせるなど、数値では計れない視覚に訴える作業は、オペレーターの知識や経験だけでなく、センスもが問われることになります。
印刷における色の見え方は、人の感覚に依存する部分が多いため表現が曖昧で、しかも、室内の蛍光灯ひとつでその見え方は大きく変わり、印刷の色再現は経験と勘に頼っているなど、多くの問題と課題があります。印刷の色管理方法は、各印刷会社によって異なることが多く、さらには、印刷会社の中でも印刷機械によって色の異なりがあり、不安定要素となっています。そして、私たちは、常に安定した品質の印刷物をお客さまに提供できる環境を構築しなければならないと考え、これらの改善のため、各工程の数値による管理が重要であると考えました。そこで、私たちはJapan Colorによる色の標準化へ取り組み、見た目による印刷から脱却し、数値管理によって印刷状態をコントロールし、印刷の標準化を目指しました。そのためには、各種データを収集し、分析、印刷機の予防保全とメンテナンスをルール化しました。
このように、Japan Colorによる共通の色基準を各部署が共有することにより、私たちはプリプレスから印刷までトータル的な色管理が的確にできるようになりました。この数値管理による標準化は、常に安定した印刷物を生産するためのベースになるもので、私たちの標準となります。